判例時報(2237号)から 白酒の思い出

弁護士ブログ

中国のロケで、現地有力者との宴会で白酒の乾杯で泥酔し、就寝中に吐瀉物を誤嚥して死亡した事故につき、傷害保険普通保険約款に定められている「急激かつ偶然な外来の事故」に該当するとし、疾病免責や心神喪失免責の抗弁を否定して保険金の請求が認容された事例(東京高裁)

(チチハルでの経験から)

結論は妥当だと思います。特にこの事案では、「就業中」であったか否かも争点になっています(原告には、グループ傷害保険契約を締結した会社が含まれていますが、その場合「就業中」が条件となっています)。判決はこの点も明確に肯定しました。

さて、この判決を読んで「白酒 バイチュウ」のことを懐かしく思いました。

私はチチハルで旧日本軍の遺棄毒ガスによって死亡、傷害を受けた方々の代理人として業務を行っていましたが、その際被害の聴き取りのために、これまで6回チチハルへ行きました。チチハルというのは、鶴のふるさとという意味ですが、中国の東北地方で、2月には氷祭りがあるくらい、厳寒の地です。そのためか、ビールは冷やしていないし、乾杯に用いられるのは白酒です。地元の弁護士や有力者との宴会の乾杯で用いられる高級な白酒はアルコール度数50度を超えます。呑むと、強烈な液体がのどから食道を通過するのがわかります。乾杯の場合には一気のみで、宴会に参加した方が自己紹介するたびに乾杯するので、円卓で1周するうちに、かなりのアルコールを執ることとなります。しかし、これを断るのは至難の業。同行した弁護士が、昼間の宴会で30分くらいで泥酔して、その後の業務ができなくなったこともありました。

前述の判例は本件においては、「中国においては宴会が業務の一環であること」を認定したようですが、かといって、アルコールに弱い人が白酒を呑むのは極めて危険です。度数を確かめるとか(25度くらいからあります。これは焼酎と同じですね)、途中から呑むふりをして捨てるとかで場をしのぐ必要があると思います。中国へ出張される方はご用心を。

ページの先頭へ